自分をフェミニストだと勘違いしているマッチョな人間って始末が悪い

大学時代の同級生にKという人物がいた。彼は自らフェミニストを自認しており、同級生の女性にたいして「おまえも女性なんだからその辺はもっと考えなければいけない」などとお説教をするぐらいだった。

そういうことを言うぐらいだから、フェミニズムに関してものすごくよくわかっているのかと思っていたら、こんなことを言うのだった。

「女の子にそんなことさせるわけにはいかないから、俺がやるしかなかった」

この発言はどのような文脈においてなされたのかというと、次のような状況だった。あるときKは数人で地方の小さな飛行場に映像を撮りにいくことになった。カメラは二台で別々のポジションで同時に撮影する。Kは後輩の女性と二人で一台のカメラを担当することになった。撮影は長引き、カメラのバッテリーが切れてしまった。充電するためには200メートルほど離れた小屋に行くしかない。撮影対象はずっと動き続けているので満タンになるまで充電している暇はない。仕方ないので少しだけ充電しては撮影し、バッテリーが切れたらまた充電しにいくということを繰り返すことになる。このバッテリーを充電しに200メートル先の小屋まで走って往復するという行為を「女の子にはやらせるわけにはいかない」とKは言ったのだ。

明らかに相手にとって身体的に無理な仕事(相手が男女を問わず)を自分が代わりにやるというのなら話はわかる。しかし、200メートル先まで往復することはその後輩の女性にも簡単に出来ることだった。それでもKにとっては「女の子にやらせるわけにはいかない」ことだったのだ。

恐らく、面と向かってKに「フェミニズムとは男性が女性をまもることか?」と問えば、彼はそれを否定するだろう。彼も頭ではフェミニズムはそういうものではないとわかっているはずである。それでも無意識のうちに上記のような言葉が出てきてしまうのである。心の奥底では、「男は女性を守るべき」という価値観が染み付いてしまっているのだろう。

Kの「迷言」はまだまだある。ある既婚の大学に通っている女性が、大学が遠くて通いづらいし猫も飼いたいので、配偶者の職場のすぐそばから大学との中間点あたりへと引っ越すことを決めた。それを聞いたKは彼女にこう言い放った。
「稼いでくれてるのはだんななんだから、自分のわがままばかり言うもんじゃない。猫なんていつでも飼える。」

えーっ!?何その「俺が食わしてやってる」的発言は?おまえそれでも自称フェミニストかよ。何で二人で決めた事におまえがえらそうに口出しなけりゃいけないんだ?恥ずかしい奴。

そんなKを評してあるKの後輩の女性は「Kさんはカタカナ「」付きの『フェミニスト』なんですよ」といっていた。けだし言いえて妙である。

Kのような「自分はフェミニズムのことをよく理解している」と考えている男根主義者は非常にやっかいだ。自らの過ちを指摘されたりすると感情的に反発してきたりするものだから。

はじめから「かかわってやっている」という意識がある人間は、当事者に反発されると何を批判されているのか理解できずに「俺の善意を否定するような奴らは最低だ」となって真逆に振れてしまったりすることがよくあるとどこかで読んだような気がする。*1。これはフェミニズムの問題に限らない。頭の中では理解したつもりになっているけど全く理解できていないということはよくあることだ。わかってないと批判されたのなら、なぜ、どのような部分を批判されたのかということを立ち止まってよく考え、その上で受け入れるべきは受け入れ、反論するべきなら反論するという姿勢が重要であるという意見に反対する人間は少ないだろう。

でも多くの人間は「批判された」という事実に感情的にそれこそ脊髄反射的に反発してしまう。傍から見ているとこういう行動をとっている人間ほどみっともないものはない。僕は絶対にこうはなりたくない。

*1:Kがそうだったといっているわけではない。念のため。